皆さんこんにちは! 今回のテーマは「Googleマーチャントセンター」です!
実は以前もわいわいワイドで取り上げたことのあるこのテーマ、以前はマーチャントセンターの歴史や背景など、過去を整理して振り返る的な内容でお送りしましたが、今回はその発展形として現在地と未来について語りたいと思います!
前回の内容はこちら▼
未来について語るならその道のスペシャリストにご登場願おうということで、ポッドキャストの本編ではまたまたゲストをお招きしています!
今回お招きした田中広樹さんは、長きにわたってGoogleマーチャントセンターやショッピング広告の発信を続けてこられてきたスペシャリストで、ちょうどこの収録のタイミング(2023年9月)にそのための法人も立ち上げられています。
そんな田中さんに、Google マーチャントセンターの現在地と、今後の発展の可能性についてお伺いしました!
▼AM放送のノリで話しています。ポッドキャストはこちら▼
Google ショッピングを通じて経済に貢献していきたい
わいわいワイド(以下、わ)「田中さん、よろしくお願いします!」
田中さん「よろしくお願いします。来世は Google マーチャントセンターになりたい田中です」
わ「もはや概念 笑! では現世の自己紹介をぜひ」
田中さん「Yuwai株式会社の田中です。2023年9月から独立して新たに会社をはじめました。これまでは広告代理店に長くおりましたが、今後自分の好きなマーチャントセンターをちゃんと使ってビジネスを大きくしていきたいと考えたときに、やはり会社の一員ではなく法人として自ら動いたほうがいいと考えて独立しました。
事業としては、主に Google マーチャントセンターや Google ショッピングの支援を、事業者だけではなく代理店や地方自治体、ECカートプラットフォームまで巻き込んでいきたいと考えています。ちゃんとマーチャントセンターを利用いただくことで経済を回していくことに貢献したいと思っています」
わ「Google マーチャントセンターを使うプレイヤーは多岐にわたるので、それらを横断的にサポートしていくということですね」
田中さん「はい、そういうことです」
マーチャントセンター「ネクスト」が起こす変化
わ「マーチャントセンターの現在地についてどこからお話ししようかなと考えると、やはり2023年5月に行われた Google Marketing Live で発表された『Google Merchant Center Next』(以下、ネクスト)かなと思います。ネクストを通じて徐々にマーチャントセンターが次の形になっていくのかなと思うのですが、いかがでしょうか?」
田中さん「そうですね。今は『新規でマーチャントセンターのアカウントを作った事業者さんからはネクスト』というかたちで載せ替えていくようなんですけども、ヘルプはあれど具体的なところは2023年の9月時点ではまだこれからという感じです。
現在わかっている情報を大雑把にまとめると、『AIの活用』と『商品データの収集方法の拡充』、大きくこの二つの柱だと見ています。
1つ目の『AIの活用』で目新しいのは、商品画像を編集できる Product Studio(プロダクトスタジオ)ですね。商品画像に装飾をかけたり、あるいは背景を抜いたりとか、今までなかなか手が付けにくかった商品画像の最適化がマーチャントセンター上で個別にできるようになります。
もう1つの『商品データの収集方法の拡充』は、クローリングです。これまで Google に商品情報を送るためにはマーチャントセンターに商品フィードをアップロードするか、API でデータを送るか、構造化データを使う必要があったんですけども、これにクローリングが加わります。
Google がもともと持っている検索エンジン用にデータをクロールする仕組みがあるので、そのクロールしたデータの中から、おそらく商品情報と思われるものをピックアップして商品データとして生成するというような機能ですね。」
わ「クロールは面白いですよね。以前の回でマーチャントセンターの原型が [Froogle] という商品検索だったという話をしたんですけど、それが戻ってきたという感じがします。これが普及すると具体的にどういうことが起きるんでしょうか?」
田中さん「そうですね。クロールからの商品データ生成の精度がまだ未知数なので、おそらく短期的にはデータの品質が低い、要は情報量が足りていなかったり間違ってたような情報をもとにした商品データが大量に生成されてしまうというのを懸念しています。ただ、長期的に見るとその問題はある程度解決されて世界のありとあらゆるサイトの商品情報が Google に集まってくるようになるのかなと。
この情報量がほかの追随を許さないというような状況になっていくのではないかと考えています」
わ「商品情報をアップロードできる事業者はなんだかんだ限られているので、もしクローリングが普及してくれば情報量はかなり増えそうですね!そうなるとおそらく Amazon くらいしか対抗できないかもしれません」
田中さん「Google は商品情報が多ければ多いほどいろいろな接点がつくれて広告の収入も増えるので。ECはこれから先も伸びていきますし、ショッピング広告が衰退するってことも考えにくいですからね」
わ「そうですよね。そうなると、事業者だけじゃなくてECの他のプレイヤー、たとえばショッピングカートがどれだけシームレスに対応できるか、というのは重要になってきますね」
田中さん「まさにそうですね。Googleの技術進化に対してパートナーの対応がなかなか追いつけないところの壁というか、温度差があるのは否めないと思っています。カート側もそこまでお金やリソースをかけて収益化できるのかというと、やはり分からないというか。。。こういう技術以外でのギャップをどうするのかは今後の課題ですね」
わ「確かに。Google の力が強くなればなるほど、カート選びによるマーチャントの利益/不利益がよりはっきりしてしまいますよね。だからといってなんでもかんでも Shopify にすればいいとも限らないですし、それぞれの会社のオペレーションにあったシステムを選びたい。そう考えると、自社の利用するシステムと、Google のようなチャネルとの接続はとても大きなイシューですね。重たいけど、ハマればレバレッジが効くといいますか」
田中さん「本当にそうですよね。マーチャントセンターって実は Google だけで使うものではなくて、例えば広告プラットフォームでいえば Criteo や Facebook、Microsoft広告でもシームレスに使えます。Google 以外のデータ活用まで含めると、非常に拡張性の高い仕組みです。だから、たいへんだけどとても面白い分野であると言えると思います」
マーチャントセンターのこれから
わ「ネクストの普及に先にはどういうことが起こるでしょうか」
田中さん「ショッピング広告での収益以外でいいますと、[Googleの外側] での収益化に向かうのではないだろうかと考えていまして、その可能性の一つが近年流行っているリテールメディアですね。Google の技術があれば、マーチャントセンターと、小売り向けサイト内検索機能である『Retail Search』、そしてショッピング広告枠の『AdSense for Shopping』という3つのサービスを連携してリテールメディアを提供できると思うので」
わ「たしかに! 『Retail Search』と『AdSense for Shopping』を組み合わせればほぼ狭義のリテールメディアですね。以前のサイト内検索の回で話しましたが、「サイト内検索」が課題になる事業者は規模が大きいので、その時点で対象がエンタープライズに絞られます。それは物販以外での収益性にも目が向く規模でもあるので、ただ広告を貼りつけるのではなく、RPMを上げるためのショッピング検索広告というのはありそうなソリューションですね」
田中さん「Criteoなどはすでにその方針で大きく伸ばしてきていますね。Google が技術を持っていながら進出しないのは、マーチャントセンター自体が各部署を横断するサービスなので、縦割り構造だと進みにくいというのはあるのかもしれません」
わ「笑。でもここがうまく融合してくると大きなビジネスになってくるかもしれませんね」
田中さん「Criteoしかり、ウォルマートしかりですよね。もしかすると、やろうとしていたけど生成AI の緊急度が上がっちゃったという事情もあるのかなと思っています」
わ「そうかもしれませんね。ネクストでいうと、クローリングからの商品情報生成はもともと用意してたはずです。Googleらしい機能なので。でも生成 AI が来ちゃったので、Product Studio(プロダクトスタジオ)みたいなギミックっぽい機能を優先的に打ち出してきた。そんな感じがします」
田中さん「そうですよね。たとえばマーチャントセンターにアップロードする商品情報は当たり前ですがガイドラインがありまして、商品画像は基本的に『白抜き』で登録してくださいというポリシーになっています。でも、ネクストの Product Studio(プロダクトスタジオ)で押している機能は『背景を変えることができます』なんですよね 笑」
わ「ポリシー違反だ! 笑」
田中さん「自分でその機能付けちゃっていいの?という。こういうところからも焦りのようなものが見えますよね」
わ「そう考えると、一旦落ち着いてきたら、本来のやりたい方向、つまりデータをどんどん拡充して自動化していく方向に舵を戻してくんだろうなっていう気はします」
田中さん「そうですね。やはりどのように商品情報を増やしていくかにフォーカスするところは変わらないのかなと思っています」
あらゆるプレイヤーがマーチャントセンターを利用できる未来
わ「仮にマーチャントセンターがあらゆる商品情報が網羅されたデータベースになったとすると、事業者だけでなく、代理店や個人、自治体なども含め、あらゆるプレイヤーが使えるようになるといいですね」
田中さん「はい、プレイヤーによってやれることは違うと思ってまして、例えば地方自治体さんであれば、マーチャントセンターの機能とか未来の話よりも前に、『Google で検索したときに出るあの画像ってどうやって出すの?』みたいなところから始める必要があると思っています」
わ「そうですよね。プレイヤーそれぞれに事情があって、組織や経済にいろんな制約、難しさがあると思うんですけど、だからこそ冒頭に田中さんが言ってくれたような横断的なアプローチが必要なんだろうと感じました」
田中さん「私も法人をつくった目的の一つはそれで、個人だと対応できる事業者さんの数はどうしても限られているので、レバレッジをかけるには地方自治体や広告代理店、マーケターのみなさんもサポートしたい。それらの先には多くの事業者がいらっしゃるので、マーチャントセンターを使った集客のノウハウを展開していくことで、より多くの事業者さんを間接的に手助けできるといいなと考えています」
わ「マーチャントセンターをめぐる環境は常に工事中というか、ずっと変化し続けていますよね。だからこそプレイヤー同士が有機的に絡んでいく必要があるのかなと感じました」
田中さん「そうですね。情報が多いのでどうしていいか分からないという声はありますが、やはりショッピングに関してはおそらく最も先進なプロダクトだとは思うので、分かってくると面白いと思います。少なくとも私はアップデートを毎回楽しみにしているので」
わ「また大きなアップデートがあったときにはぜひ田中さんに解説してほしいです。本日はありがとうございました!」