リワイア 加藤さんに聞く 2024年、コマース領域のこれから

今回も、前回に引き続き2023年の振り返りと2024年のEC業界展望について識者に聞くシリーズをお届けします。第2回目は株式会社リワイアの加藤英也さんにお伺いします。前回はメディア視点でのお話でしたが、今回はブランド支援サイドでの2024年の予想について聞いてみました!

▼AMラジオのノリで話しています。音声で聴かれる方はこちらから!▼

コマースプラットフォームが基幹システムに

わいわいワイド(以下、わ)「それでは加藤さん、自己紹介からお願いします!」

加藤さん「株式会社リワイアの代表取締役をしている加藤です。普段はShopifyというコマースプラットフォームのアプリやストアの開発や構築を支援しています」

「ありがとうございます。前回の竹内さんにお伺いした話では「越境EC」「物流問題」「Cookie問題(3rd Party Cookieが使えなくなる)からの1st Party データの重要性が増したり、リピート施策のためのCRMの重要性が増したりする」というのがキーワードになっていたのですが、加藤さんの普段のお仕事の中で気になっているテーマはありますか?」

加藤さん「物流なんかは、大きく捉えると”物を売るオペレーション”に対して人が足りないという話だと思います。コマースプラットフォームがいくら進化しても、商品があってそれを届けるという作業自体は変わらないわけで。そこで、最近よくご相談いただくのが、物流や倉庫管理、受注管理、在庫連携など、物流を含めオペレーションを一気通貫で効率化していきたいというお話ですね。昔に比べると、EC部門の人というよりは全社システム部門の方と相対する機会が増えています」

「物を売るための機関システムとしてSopifyを活用したいという要望ということでしょうか?」

加藤さん「そうですね。最近BtoBでも結構そういったご相談があります。例えばいわゆるBtoCだと、プロモーションしやすい形のストアを立ち上げたいとか、シェアしたい形にしたいみたいなご相談が多いのですが、BtoBの場合は倉庫連携なんかを結構しっかりやる必要があります」

「SopifyっていわゆるBtoCコマースの中のEC部分を担うと捉えられがちなんですが、実際のつくりとしてはEC自体がメディアの一つとして捉えられるような設計になっていますよね。だから、企業間取引があっても、複数拠点や複数倉庫があったとしても、なんとか連携できるように作られている。なので、課題が複雑になればなるほど、その中間のつなぎ方みたいなところにご相談が来やすいという感じでしょうか」

加藤さん「どうしても、フルスクラッチで作るとなるとお金がかかるので、それよりはもっとライトに展開していきたいが、小さいプラットフォームだと難しい、みたいなジレンマを抱えるマーチャントさんはたくさんいらっしゃいます」

「例えばどういうケースが多いんですか?」

加藤さん「面白い事例として、手芸屋さんからのご相談がありました。もともと店舗が複数あって、一般消費者向けにも売ってるんですが、個人で教室を開催されているようなセミプロの方も買いに来られます。そういう人は100や200単位で購入されるので、BtoB~BtoCまで購買層がいるということになります。そうなると、どちらの要素も持つストアやシステムがどうしても必要になります。今まではそれをどう処理していたかというと、伝票に書いて、申込書を書いて、FAXで送って…みたいな作業をしていたわけです。これをデジタル化したいというご相談でした」

「伝票処理していたのをPOSに移行するみたいなイメージですか?」

加藤さん「BtoB専用の会員専用ストアみたいなのを作って、店舗のスタッフもそのBtoBストアから注文するイメージです。ちなみに、POSの場合も、Shopifyで最近アップデートがあり、店舗で受け付けたときも一部は店舗で取引終了、別の一部は配送、みたいに選べるようになりました」

「これはお取り寄せ、これは店舗、みたいな選択ができるようになったんですね、便利」

加藤さん「まだディベロッパー版だったり制約はありますが、引き続きどんどん変化していっています」

共通ログインID化ニーズが高まる

「変化といえば、ニーズが店舗に戻ってきているというのはありますよね」

加藤さん「そうですね。オンラインとオフラインの統合はずっと言われていることですが、コロナ禍で一度EC化率が上がり、流通総額が増えましたが、まただんだん店舗にも戻ってきていて、現在はハイブリッドな形になってきていると思います。その中で、ユニークIDの活用が現実味を帯びてきている」

「ご相談は多いですか?」

加藤さん「かなり多いですね。例えばリクルートIDのようなわかりやすい共通IDがあると思うのですが、これに各社さん力を入れ始めている印象を受けます。技術的には、シングルサインオンといって、1個のIDを登録すると色々なサイトにログインできる仕組みですが、これをECにもコミュニティサイトにも、キャンペーンサイトにも入れたい、みたいな連携が増えています」

加藤さん「昨年の後半から今年にかけて、大きい事業体に属する複数グループの色々なストアで1IDを共通で持つ、軸を通すみたいな流れが増えている気がします」

「1つの親会社があって、法人は別の複数の事業体が展開していて…みたいなイメージですかね。そうなると、別々のシステムを使っていたりして大変そう」

加藤さん「なので、ECのプラットフォームは例えばShopifyに統一するような動きになります。開発が単純に1つになるわけではないけれど、技術的なコストで言うとバラバラのプラットフォームをつなぐよりは揃えたほうが断然わかりやすい」

「リワイアさんとしては、そこに伴走したりコンサルティングすることが今多いのですか」

加藤さん「そうですね。フロントエンドと言われる、ストアの実際にお客様が見るところを構築する仕事ももちろなりますが、ニーズとしては先ほど言ったようなもう少し深い部分のご相談も増えています」

「となると、もうEC部門というよりは全社的な動きになるわけだ」

加藤さん「そうですね、IDもそうですし、物流もそうですが、もう全社的にコマースに力を入れようという流れになっていると思います。これまではフロントでマーケティング部門がECの部分も兼務しているパターンが多かったですが、最近は全社的にコマースをコミュニケーションやCRMのハブにしたいという意識の高まりを感じます」

2024年はコマース領域の転換期

「コマース領域が一皮むける、転換期にさしかかったということなのかもしれませんね。リワイアとして、加藤さんとして2024年に注力したいテーマはありますか?」

加藤さん「どんどん売り上げを伸ばしていくECももちろん引き続き支援したいです。一方で、先ほどお話したように、レガシーを乗り越えて次のステップにいこうとしている会社様の支援は非常にやりたいと思っています。基幹システムの移管や連携など、もちろんやらないといけないことは多いのですが、そこを乗り越えると、コマースがコマース以上の領域に昇華するというか、CRMやIDなどいろいろなものがくっつけていけて、できることが増えていくと思います」

「2024年は、これまでの増改築を繰り返してきたコマースプラットフォームを、リフォームではなく新築にして、できることをどんどん増やしていく世界の到来ですね。加藤さんありがとうございました!」