皆さん運動はされていますか?わいわいワイドの2人はあまり運動するほうではないですが、今日は”市民マラソンを名産品の切り口で語る”という回にしたいと思います。
▼AMラジオのノリで話しています。音声で聴かれる方はこちらから!▼
年間1500開催を超える市民マラソン
近年のマラソン・ランニング人気は改めて述べるまでもないですが、市民マラソンって世の中に一体いくつ開催されているのかご存じでしょうか。
単なるフィットネスとしてのジョギング・ランニングの具体的な目標として市民マラソン大会は大きな役割を果たしていて、東京マラソンのような世界的にも有名な都市型マラソン大会もあれば、地方の小さな小規模マラソン大会までさまざまな市民マラソンが全国津々浦々で開催されています。その数、年間で実に1500を超える※1と言われているそうな。
※1 関西大学 杉本厚夫 『市民マラソンは都市を活性化するか』
さらに定義を具体化させ、以下の定義で収集すると116ほどになるそうです。
- 参加者を陸上競技連盟登録者 に限定せず,広く一般のランナーから参加募集を行い,参加費を集めているマラソン大会
- 河川敷や運動公園内,特定の施設の敷地内だけを走るのではなく,一般の公道(国道や 市町村道)をコース中の多くの部分で使用しているマラソン大会
- 毎年同時期に継続し て実施されているマラソン大会
- 種目の中にフルマラソン(42.195km)が含まれている
引用元:千葉商科大学 山田耕生『日本における市民マラソン大会の動向と今後の展望に関する考察』
これだけ各地で開催されているということは、それだけ何かしらのメリットが大きいということ。具体的にはどのようなメリットがあるのだろうか?
市民マラソンの経済効果
以下は日刊ゲンダイの記事の引用ですが、市民マラソンにはかなりの経済効果があるとのこと。
関大名誉教授の宮本勝浩氏(経済学)が、2022年度の「市民マラソン」の経済効果を約3968億円と算出した。これはコロナ以前の約55.7%の水準であるものの、コロナ禍により多数の市民マラソンが中止になった20年度の約7123億円の損失と比べると、地域の活性化に大いに貢献する金額だという。
経済効果は22年度で3968億円!「市民マラソン」がカネを生む“カラクリ”と役割
地域の活性化に一役買っている市民マラソン、なぜこんなに猫も杓子もマラソン大会かというと、その理由は投資対効果の高さにありそうです。
一例ですが、経済効果NETというサイトによると、2023年の東京マラソンの経済効果は
直接消費額は147億6300万円となり、一次および二次波及効果まで含めると、全国で309億4700万円。東京都に限定しても、221億400万円という結果になった。
ということらしいですが、
東京マラソンの場合、大会運営に掛かる費用(35億6200万円)に対して経済波及効果(309億4700万円)は、8.6倍になる。大会経費が、観光や飲食、スポーツ用品など様々な産業に広がり、8.6回も回転しているということだ。
東京マラソン2023 経済効果309億円
とあるとおり、経済効果に対して運営経費が少なく、費用対効果が高いといえるとのこと。
たしかに補助金等の拠出や既存施設・道路等のインフラや警察消防などの調整はあるけれど、オリンピックや各種の大会のように新たに施設を建設する必要はないし、大きな広告費を集めないといけないというわけでもなさそう。強い観光資源がない自治体にとっては、少ない投資で地元をアピールできる絶好のイベントだと言えそうです。
経済効果の内訳は?
経済効果と一口に言ってもいろいろあります。多くのマラソン大会は当日受付がNGで(朝スタートだから当たり前だが)、「数ヶ月前までのエントリー+前日までの受付」が徹底されているところがほとんどなので、規模に応じて必ず往復の足と1泊以上の宿泊が発生します。
なのでいわゆる旅行業(交通費・宿泊費)としての経済効果が大きいのかな?と思っていましたが、人が滞在すればそれだけ経済が発生するというもので、交通費以外の経済効果も大きい模様。以下は東京マラソンの経済波及効果を表した図表です。
この中でも特に着目したいのが、「土産」の項目。なんと宿泊費より多いのです。
「土産」は単体でも「交通費」に次いで2位に位置しますが、地元での飲食などの消費も合わせるとかなり大きい割合を示そうです。上記で例示している東京マラソンは大都市での開催なので沿道応援消費がかなり大きいのはあるにしても、お土産や地元の飲食店にとってはかなり大きなインパクトがあるといえそうですね。
上の円グラフは「東北風土マラソン&フェスティバル2019」において大会事務局が試算した経済波及効果を表した図ですが、「国内宿泊・移動」が31%、地域に滞在中に外食やお土産品の購入にあたる「会場外消費」が32%を占めています。大都市よりも相対的に会場外の市場が小さい場所での大会であっても、お土産や飲食などのインパクトは大きいことがわかります。
東北風土マラソンは「風土=food」に掛けているということで、合言葉も「食べる、飲む、走る!」となっていて、かつ競技自体もハーフ・親子・バーチャル(!?)と多岐にわたり、競技よりもイベント色が強い市民マラソンです。なのでとにかく飲食をメインターゲットにしていて、観光開発としてのマラソン大会なのだなと感じられます。
改めて、マラソン大会は「地元」の名産品や食材を感じてもらうには非常に投資対効果が高いイベントだと言えるのかなと感じました。
マラソン大会のスポンサーは誰?
パーソナリティのオカダの地元、金沢では「金沢マラソン」が開催されています。金沢マラソンはエイド(補給)が充実していることで評判が高いマラソン大会です。
以下の画像は金沢マラソンにおける「食べまっしステーション」と題された各エイドの一部を抜粋した画像ですが、まるで金沢や石川の名産品のデパートのような仕様になっているのがわかります。実際にマラソン大会の受付時には多くのパンプレットや試供品が配られるので、エイドを通して名産品を知り、お土産や飲食、そしてその後の通販などにつながっていくのだろうと想像できます。
パンフレットのQRコードやウェブサイトからのリンクを通じて各ブランドサイトやECサイトへの動線が整備されているほか、金沢の場合は駅に一台土産物コーナーがあり、大抵のスポンサー商品はここで買うこともできます。
たとえば、まつやの「とり野菜みそ」。
こちらは味噌なのでエイドでは使いにくいため、フィニッシュ会場でお土産品として渡されます。関東など他地域だと食べたことのない人が多いと思いますが、北陸ではど定番の味噌。これが本当に美味しいんですが、県外のスーパー等では棚取りが難しいからなのか、知られる機会が少ない商品でもあります。
だからこそこういったイベントでスポンサーになることで知ってもらう機会を増やし、リピーターにつなげたいのだと思われます。マラソン参加者や応援者は新たな美味しいものを発見する機会になり、スポンサーの地元企業は他府県の消費者にアピールする機会になり、大会主催者はスポンサー料をいただいて健全に運営できる、まさに三方良しな取り組みだと思います。
コロナ以降Eコマースに力をいれている地方ブランドは多く、オンラインのみならず実際に体験したり見る機会を増やすことによって越境していきたいブランドにとって、市民マラソンはうってつけのチャネルだと考えているのではないかと思います。
市民マラソンに参加する方、応援に行く方はぜひそういった視点でも市民マラソンを楽しんでみてはいかがでしょうか?