卒塔婆がネットで買える時代!?「卒塔婆屋さん」を調べてみた

本日は、わいわいワイドの中でも(まだ比較的)人気のあるニッチEC調べてみたシリーズです。なんかいいサイトないか…と嘆いていたところ、コマースピックの編集者さんから「こんなサイトあるよ」と教えていただいたのが、今回ご紹介する卒塔婆業界の急先鋒、その名も「卒塔婆屋さん」です!

名前のインパクトもさることながら、卒塔婆ってネットで買えるの!?という驚きから「オラわくわくするぞっ!!」と私の中の悟空ゴコロがくすぐられまくったので、調べてみました!

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そもそも卒塔婆…って?

普段俗世間で生活していると目にする機会が少ない卒塔婆。お墓にあることは知っていても、あまり意識したことがありませんでした…。今回改めて卒塔婆って何だろうと調べてみたところ、もともとは仏教生誕の地インドのサンスクリット語「ストゥーパ」からきているらしい。ストゥーパは仏陀の遺骨を納めた塔。なんだか高校世界史でやったような気がしてきました。

ここから転じて色々あって、簡略化されて誕生したのが卒塔婆だそうです(雑)。お寺さんで依頼すると、1本あたり4,000~10,000円くらいでお願いできるみたいですよ。

ストゥーパ

卒塔婆屋さんは現在6代目。斜陽産業の焦りがEC設立のきっかけに

今回取り上げる「卒塔婆屋さん」はもともと1882年創業の老舗で、現在のご当主は6代目なのだそうです。もともと現当主さんはサラリーマンで、奥さんのご実家が卒塔婆屋さんだったご縁でご実家を継がれたと。ただ、卒塔婆業界はお寺の檀家離れや伝統文化から離れつつある現代社会の影響で、斜陽産業だったのだそうです。

卒塔婆屋さんサイトはこちらから

どげんかせんといかん、ということでネット販売に力を入れることを決意されたそうで、ネットショップ初心者だったところからコードの書き方を覚えたりコツコツ勉強されて、現在は取引している寺院数は4000件以上、仏具店は200件以上の規模に成長されたそうです。

のちほど紹介する会員ランク精度の金額からしてもおそらくToCに対しての販売というよりは、ToB(To Buddhaじゃないよ)向けのサイトなのだと思います。とはいえ卒塔婆は1本からオーダーできますし、毛筆筆耕オーダーもできるので、門戸は広く開けられている印象を受けました。

卒塔婆屋さんのサイトを拝見して、ミッションビジョンバリューが非常にしっかりと考えられていて、それらに沿って運営されている点に感銘を受けました。なので以下からは、ミッションビジョンバリューに沿ってすごいポイントをご紹介していきたいと思います。

卒塔婆屋さんのミッション:日本の宗教儀礼を守り・継承するインフルエンサーとなる

インフルエンサーとなる、つまり拡散力のある媒体になることをミッションに掲げているだけあって、LINEやYouTube、Facebook、Instagram、TwitterなどのSNSは網羅されています。過去のハイガーや貨物堂もそうなのですが、イケてるニッチECはもれなくSNSを有効活用されています

 

 

中でも活発に動いているアカウントはInstagramとFacebook。これらに関してはショップ連携もされており、投稿やショップからシームレスに購入できる導線を整備されています。

Instagramではリール動画も投稿されており、卒塔婆ができるまでの工程や職人技を見ることができます。

自社製品に自信があるからこそ見せられる作業工程

LINEは基本的にはヘルプチャットツールとして利用されているようです。Botではなく有人対応のようで、営業時間が設けられています。LINE同様、Web上にもチャットツールが導入されていますが、Webチャットの方は自動返答も組まれていて、サイトマップのような役割を果たしています。

卒塔婆屋さんのビジョン:寺社仏閣の課題解決の伴走者になる

もともとは卒塔婆製造業として創業された同社ですが、現在は卒塔婆以外にも護摩木や神棚、墨汁など寺社仏閣のかゆいところに手が届くラインナップをEC上で取り揃えていらっしゃいます。また、卒塔婆も1本から50本入りのような大ロットまで取り揃え、宗派に合わせた手書きオーダーや訳アリ品の特価販売も行われています。

↓の墨にじみ解決特集とか、すごくニーズがありそうだし、ツボを心得ている感じでいいですよね(寺関係者じゃないから「それ困ったことあるわ~」と言えないところが悲しい…)。

特に私が感銘を受けたのが「寺コラム」。よくあるコンテンツマーケティングかなと思いきや…並ぶタイトルとサムネイルを見てびっくり!『お寺のブランディング戦略』や『お寺のSNS運用:コンテンツ作成で差をつける7つのヒントとSNSごとの使い方』など、お寺が苦手としていそうなWeb戦略やブランディングについて解説しています(しかも寄稿までしてもらっている)。

もちろん、使用済み卒塔婆の処分方法や経営がうまくいっているお寺の檀家との付き合い方など、お寺ならではの課題にアプローチしたコラムも。課題解決の伴走者としての在り方を模索されているのが分かります。

AIDMAの図とか、マーケ系のメディアで見たことのあるクリエイティブが並ぶ…!

加えて、Facebookでは「寺ハウス」という寺関係者のオンラインサロンも管理されていて、寺社仏閣関係者が交流する場づくりにも尽力されています。

卒塔婆屋さんのバリュー(抜粋):お客様の満足

バリューを達成するための取り組みはいくつかあるので、本記事では抜粋して取り上げます。まず「お客様の満足」に関しては、本サイトのように「購入目的、購入商品があらかじめ決まっているもの」を販売している場合、リピーター獲得がキモになると思うので、そのためのセオリーはしっかりと踏襲されています。

例えば会員ステージ制度。今年の5月のサイトリニューアル以降の購入は期間無制限で累計されるらしい。ダイヤモンド会員ってどんな人たちなんだろう。年間500万以上ではなく”累計”500万以上というのが良心的かなと思いました。

また、卒塔婆のサブスクのような定期便も行っている。2回目以降も通常価格から10%OFFで購入できるので、定期的に卒塔婆が必要になる大きな寺等ではアリなのかもしれない。事例インタビュー記事とか読んでみたいなあ~。

卒塔婆屋さんのバリュー(抜粋):創業以来の製造方法を忠実に守る

卒塔婆屋さんの卒塔婆は自社製造。製造方法を紹介する動画が複数UPされていることからも、作り方にこだわり、かつそれに自信をもっていらっしゃるのが伺えます。レビューも掲載されているのですが、レビューの満足度も総じて高かったです。

卒塔婆屋さんのバリューは他にも色々あり、「痒い所に手が届くサービスを提供する」「時代の変化に合わせ、変化し対応する」「寺社仏閣の毛家サポート」「凡事徹底」などがあります。ひとつひとつの施策をピックアップして紹介してきましたが、それぞれの施策にこれらのバリューが組み合わさって反映されているなと感じました。

斜陽産業こそ、守りに入らない

ミッションビジョンバリューを掲げて明文化し、その軸にそって様々な施策を展開されている卒塔婆屋さん。卒塔婆業界に、サラリーマン時代に培ったと思われる異業種の考え方を取り入れて、素敵な化学反応を起こしていらっしゃるなと思いました。

その結果として、2023年には一社イーコマース事業協会が主催する「第15回全国ネットショップグランプリ」で特別賞を受賞されています。

全国ネットショップグランプリの様子はこちら

同じく斜陽産業と言われる出版業界に一時身を置いていた井谷だからこそ感じるのが、斜陽産業ほど(一部の大手やベンチャーを除いて)歴史のある中小企業は内にこもる・守りに入る傾向があるのではないかということ。

斜陽産業こそ、現状に甘んじずどんどん変えていく必要があるなと感じる調査になりました。卒塔婆屋さんのバリュー達成に向けての取り組みにもありますが「時代の変化に合わせ、変化し対応する」ことができる企業が生き残っていくということを胸に刻んだ回となりました!