ひとり出版社を応援したい話(3/3) 〜エッジの効いたひとり出版社たち

皆さんこんばんは。今日は、3回にわたってお話してきた「ひとり出版社を応援したい話」の最終回です。前編では現在の出版業界の状況とひとり出版社が増えている理由、中編ではひとり出版社を起こしやすい環境が整ってきているという話をしてきました。ラストの今回は、色々な特徴を持つひとり出版社と、本にまつわる新サービスについて紹介していきたいと思います。

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目次

  1. 独立系出版社もさまざま
  2. 他にも、本を取り巻く新しいサービスが登場
  3. 本という媒体が生き残るために、本好きがすべきこと

独立系出版社もさまざま

独立系出版社といえば、でよく名前が挙がるのが、「共和国」さんと「百万年書房」さん。共和国さんはまだ”独立系出版社”というワード自体がなかった2014年からやってらっしゃる老舗で、アカデミックな内容の本が多いイメージです。百万年書房さんは企画力がとにかくすごくて、どの本も手に取ってみたい内容ばかり。

共和国

百万年書房

こういった出版社はいわゆる本好きの人たちのツボをしっかりと押さえていて、EP.05でお話したような、”作りたい本を作る” というモットーでやってらっしゃるのだろうなという気がします。

一方で、従来の”作りたい本ベース”の考え方で興された出版社とは異なる、新しい形の出版社も見かけるようになりました。

例えば、「ひろのぶと株式会社」さん。同社は”本を書いて、生活できる社会へ”を掲げており、印税率で出版業界を変えようとしている出版社です。これまで著者印税は本の価格の1割程度でしたが、同社では初版印税2割スタートとし、さらに売れた部数にあわせて印税の割合が上がっていくというシステム。書き手への還元を重要視しているという思想が窺われます。

ひろのぶと株式会社


他にも、本を取り巻く新しいサービスが登場

出版社だけでなく、本を取り巻く様々なビジネスやサービスも誕生しています。

「Chapters」は、本を使ったマッチングサービス。毎月のテーマに合わせて運営側から提案される4冊の本から好きな本を読み、質問に答えてプロフィールを作成すると、同じ本を読んだ人とビデオチャットができるというもの。最初はお互いの顔が見えない状態から始まるらしい。外見などのバイアスをかけずに、選書のセンスからの話の広がりでマッチング、という感じですね。

本を介して人と人をつなげるというのが面白い試みです。

Chapters

本を介した人の出会いという観点では、「taknal」も面白いサービスです。

こちらは、アプリをインストールしているユーザー同士がすれ違う際に、お互いの推し本が表示されるというもの。すれ違った誰かが推した気になる本はブックマークしておけます。位置情報ですれ違い機能を作動させているので、例えば六本木と吉祥寺だとすれ違った時に推される本の種類が変わるのかな、なんて考えながら使ってみると楽しいかもしれません。

taknal


本という媒体が生き残るために、本好きがすべきこと

紙媒体の書籍自体は、今後もなくなることはないと思いますが、ただ市場規模は確実に縮小していくのではないかと考えます。そうなった時に、一般受けしやすいテーマの本しか残らない、作りやすい企画の本しか残らない、という世界はあまりにも悲しい。

読み手にとって本当に意味があり、作り手がこだわって作った本が残っていってほしいと私は思います。そのために、一消費者である本好きは何をすべきか。私個人としては、斜に構えずに、本にまつわる新しいサービスをどんどん使っていく事が大切かと思います。

本や出版社はレガシーな媒体・業界なので、「昔からあるやり方が一番いい」という固定観念に縛られがちかと思います。私の周りの本好きだけかもしれませんが、比較的新しいものやサービスを受け入れる事に対してアレルギーがある方が多いようにも思います。でも、それだと業界全体が旧態依然のままで、新しいサービスや媒体でしかリーチし得ない、新しいファンになるかもしれないユーザーにまで本の魅力が伝わらないし広がらない。

本の魅力を一番語れるのは、本が好きな人たちです。そういう人たちが新しいものをどんどん使っていって、本の魅力を伝えるエバンジェリストになれたらいいのかな、と思ったりします。