コマースピック竹内さんに聞く 2024年EC業界どう変わる?

今回は、年始ということで2023年の振り返りと2024年のEC業界がどうなっていくのかについて、Webメディア「コマースピック」を運営なさっている竹内 長さんにお伺いする企画です!EC業界のニュースを幅広く取り上げられ、事業者、ベンダーさまざまな立場の方を取材なさっている竹内さんだからこそ持つ俯瞰的な視点で、2024年の注目TOPICSを語っていただきます。

▼AMラジオのノリで話しています。音声で聴かれる方はこちらから!▼

2023年はどんな年だったか?

生成AIの活用

わいわいワイド(以下、わ)「まずは竹内さんの自己紹介からお願いします!」

竹内さん「大学卒業後に保険代理店でマーケティングを担当し、その後ウェブ媒体や紙媒体にて見込み顧客の獲得、SEO会社でコンテンツの制作、編集プロダクションで書籍や雑誌の編集に携わりました。そののち2014年にEC業界の専門メディアに従事したのち、楽天に転職、現在はコマースピックというメディアを運営しています」

わ「デジタルから紙媒体まで、幅広くご経験なさってこられた、THEEC×メディアの人という感じのご経歴ですね!そんな竹内さんが2023年を振り返ったとき、何が印象に残っていますか?」

竹内さん「やはりまず思い浮かぶのは生成AIですね。言葉としてはすごく有名になりましたが、実務として利用するシーンはまだそんなに多くないのではないかと思います。ただ、2024年以降はどんどん実務で利用する機会が増えてくるのではないかと思います」

わ「確かに、Shopify MagicのようなAIを組み込んだ機能も登場してきていますが、実用は今年以降という感じなのですかね」

竹内さん「例えばアメリカなんかだと、まだまだ人口が伸びているのでAIを語る際に、懸念される文脈が多いです。人間の仕事が奪われるのではないか?という懸念ですね。ただ日本の場合は人口がどんどん減っているので脅威というよりは、どう活用して支援してもらえるか、という文脈で語られることが多いというのが、おもしろいです」

わ「ECにおけるAI活用の可能性でいうと、どのようなことが考えられるのでしょうか?」

竹内さん「大きくは2つに分かれます。一つは単純作業系。画像生成だったり、商品の説明文の作成を担ってもらうというものです。もう一つは顧客対応の部分で、複雑なものではなく、スピード感が求められるような対応をAIに任せようという話はよく語られています。

例えば、ロイヤルカスタマーのようなランクの高い顧客は人間が対応し、訪問してきたばかりのユーザーはAIで対応する、といったような棲み分けも行われていくと思いますね」

ステルスマーケティング規制

竹内さん「あとは、ステルスマーケティング規制、いわゆるステマ規制も注目されましたね」

わ「ありましたね!10月に開始されたので、記憶に新しいです」

竹内さん「コロナ渦以前はある程度ネットでの買い物に慣れていて、リテラシーの高いユーザーがECでの購買の中心だったのですが、コロナ渦によりEC需要が伸びたことで、これまでリアルでしか買い物をしたことのないような層、ネットリテラシ―の高くない方もECを使い始めました。それにより、慣れていないぶん誤解を招いたりするようになりました。そこで、そういった方を守るために規制が厳しくなっていったのではないかという背景があります。

ただ、このステマ規制って法的にすごく曖昧で難しい部分があり、現時点だと金銭を受け取ってPRすることに関しては規制がかかりますが、中には必ずしも金銭が発生しない時もありますよね。普段のお付き合いがあるからこそ、宣伝してあげる、みたいなケースです。そういう場合、金銭の授受がないからステマじゃないのか、ステマなのかという判断が現時点では非常に曖昧で難しいのです」

Googleのコアアップデート

竹内さん「ほかに注目されたテーマと言えば、Googleのコアアップデートが例年に比べて多かった点でしょうか」

わ「なぜ多かったのでしょう?」

竹内さん「色々と理由はありますが、一つはAIが関わっていると思います。生成AIにGoogleが対応するためにアップデート頻度が高かったのではないか」

わ「あんまりアップデートが多いと、SEO的には困ってしまいますね」

竹内さん「我々もメディアを運営しているのでSEOの順位変動やルール変更には敏感になりますが、結局どれだけ対応しようと頑張ってもいたちごっこになってしまうので、そもそもやはり読者のためになる記事は何か、という運営ポリシーを大切に記事を作るというところに落ち着きましたね」

わ「初心に帰る感じですね」

竹内さん「あとは、SEOだけに集中してしまうと何かあった際にダメージが大きいので、広告やSNSなど集客経路を分散させておいた方がいいという話はよく聞きます。また、指名検索はSEO順位の変動が比較的少ないので、指名検索を見直す、というのも一つの手です」

GA4の本格化、LINE公式アカウントの料金改定

竹内さん「ほかにも、UAの終了に伴うGA4の運用本格化や、LINE公式アカウントの料金改定なんかも話題になりました」

わ「GA4の移行は大変ですよね。みんな使いこなせてすごいなって思います」

竹内さん「事業者さんの中には、もうGA4を使わずに、カートシステムに入っている分析システムを使った方が楽だという声も耳にします」

わ「LINEに関しては、ECだけでなく様々な業態において今や外せないコミュニケーションツールですよね。今回の料金改定を受けて運用を見直された方も多いのでは」

竹内さん「そうですね。LINE側としたら、公式アカウントユーザーが消費者に配信しすぎて、消費者がうっとおしく感じるのも困りものですし、今回の料金改定のタイミングで配信数を見直してもらって、LINEをより良い環境にしたいという狙いもあったのではないかなと思います」

2024年の注目トピックス

物流2024年問題

竹内さん「2024年の注目すべき点としては、まずはその名称にも年が入っている”物流2024年問題”ではないでしょうか。どんなに技術が進歩して、マーケティングのレベルがアップしたとしても、物流が機能しないとまったく動かない業界がEC業界だと思います。それくらい、根幹をなす部分の問題なわけです」

わ「あらゆる問題が結局ここに集約してきそうですね。送料の問題もですけど、配送にかかる日数が1日遅くなっただけで顧客満足度に大きく影響してしまう。あらゆる部分に影響を与えるのに、なかなか技術で解決しにくい根深い課題も多く、今年はかなり取沙汰されそうな話題ですね」

Cookie問題、Googleのメール配信ポリシー変更

竹内さん「2024年の後半からGoogle Chromeの3rd Party Cookieが段階的に廃止されることになります。それによって、集客だったり広告配信だったりの難易度は上がりそうですね。

加えてGoogle関連でいうと、Google社がメール配信のポリシー変更を発表しています。Gmailアカウントに対して1日あたり5,000件以上のメールを配信する送信者は、このガイドラインに対応しなければいけません」

わ「メールって、いまだにめちゃくちゃ使うチャネルですよね」

竹内さん「今回の件でいうと、メルマガだけに限らず注文完了メールや発送連絡メールも含まれてしまうので、5,000件はすぐに超えてしまう事業者さんも多いのではないかと思います。対応しないとすべて迷惑メール扱いになったり、届かなかったりしてしまうので、対応が必要です」

わ「2024年2月から適応ですよね…もう全然時間がない!」

2024年の注力テーマはCRMと越境EC

竹内さん「冒頭で生成AIの話をした際にも言いましたが、人口減少が続く日本においては、国内で新規をガンガン獲得していく戦略ではどこかで頭打ちが来てしまいます。今後事業者さんが取れる選択肢として、既存顧客に対するリピートを高めるようなCRM施策が重要になっていくと思います。ただ、CRMをやったとしてもすぐに売り上げが伸びるわけではないですし、どうしても目先の新規獲得に目が行ってしまったり、長期的な顧客育成を線で描けている会社さんは多くない印象です」

わ「ECってすぐに成果を求められることも多いですしね」

竹内「CRM担当と新規集客が別担当になってしまって、訴求が異なってしまいユーザーを混乱させる、みたいな話も聞きます。課題に思われている方も多いと思うので、コマースピックでは個人的に2024年の注力テーマとしてCRMをコマースピックで扱っていきたいなと思っています」

竹内さん「もう一つ個人的に注力したいテーマが越境ECですね。昔から越境ECは注目されて伸びるという話は出てますが、なかなか成功しないケースが多いです。理由として、国内のECと海外向けECのすみわけがきちんと考えられていない、国内の延長線上でやってしまって失敗するという話はよく聞きます。ただ、先ほどの話に戻って人口減少が著しい日本では、国内市場だけを見ていてもどこかで成長は止まってしまうので、越境ECは真剣に取り組んでいくべきテーマだと思っています。なので、こちらも個人的には注力して取り扱っていきたいテーマだと思っています」

わ「わいわいワイドとしても、コマースピックさんの記事を読んで、しっかり勉強させていただきます!竹内さん、ありがとうございました」